石井筆子さんのこと

ここでは、筆子”先生”と呼びたい気分。滝乃川学園資料室の川尾先生が、いつも「筆子先生はね、、、」と、とても大切そうに話して下さったからだ。
筆子先生とは誰か? 明治から昭和初期にかけて生き、“鹿鳴館の華”ともてはやされた一方で女子教育と障害児教育の母であり、実は優れた創作家でもあった、らしい女性。詳しくは、『無名の人〜石井筆子の生涯』のページをご覧下さい。これは、つい先日完成・公開されたドキュメンタリー映画で、私も5月29日に初めて試写会に参加しました。
縁あって、この映画の製作当初から筆子先生のことを勉強する機会を戴いていました。学園の資料室にしまい込まれてあった小説を読んだり彼女の生涯を追ったり。すばらしい人なのだけれど、心のどこかで「お金持ちで心に余裕があるお嬢様だからできたのでは」という想いが捨て去れなかったのです。作品が完成する直前、宮崎信恵監督から「イメージが少しは変わった?」と訊かれた時も、Yesとは答えられませんでした。ただ一つ言えたのは、以前は納得がいかなかったキリスト教の影響、という部分。「貧しい人が貧しい人に寄り添うより、豊な人が貧しい人に寄り添う方が難しい」とキリストは言っているそうです。その部分に、筆子先生の姿がぴったりとあてはまった気がしました。
完成した映画、日本中、いやアメリカにまで足を伸ばして、あらゆる資料が集められていました。見れば見るほど、どうしてこんな人が日本の歴史から消えてしまったのか、不思議でなりませんでした。そして新たに気付いた事があります。まず、滝乃川学園でたくさんの子どもを抱えた筆子先生は、一方でひとりの子どもの“母”であった、ということです。母としての愛情、というようなものがどれだけあふれていたのか・・・。そして、障害者に寄り添うのは難しくはないのかもしれない、ということ。映画を見ての感想としては矛盾しているかもしれません。障害者は身の回りにたくさんいて、彼らをいつも見ているはずなのに、目にフィルターがかかっているかのようにその姿は通り過ぎていってしまう、けれど少し気をつけてみれば、そして少し手を伸ばせば、触れられる、そして何か役に立てるかもしれない、こういうことです。

実は筆子先生を描いた映画、もう一つできるのです。テレビで取り上げられもしたので、こちらの方が有名かもしれません。『筆子・その愛』です。山田火砂子監督は、ご自分も障害児の母だとか。鹿鳴館時代が中心になっているようですが、こちらも楽しみです。なんと言っても・・・!

ここからは、ミーハーな話。
なんと! なんと! 歌舞伎役者の市川笑也さんが出演されるのです! 美しくて、歌舞伎界で私が2番目に好きな女形の笑也さんが男性役で? しかも滝乃川学園創設者である石井亮一先生役で! なんて素敵なんでしょう。亮一先生は、それこそ歴史の表舞台で活躍された方ではありませんが、筆子先生が愛情のピンクの炎なら静かに青い炎を燃やしておられたような方。笑也さんのブログは、ここ数日映画の話題満載で、本当にワクワクしてしまいます。この夏にクランクインだそうで、本当に楽しみです。・・・えっ? じゃあ、舞台の予定はないということ? それもなぁ〜。

筆子先生に冠する本を以下に載せておきます。読んだものもあるのでレビューをしたいのですが、それはまた。

石井筆子 シリーズ 福祉に生きる

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