八月納涼歌舞伎 その2(第一部)

(すっきり+さっぱり)×我慢÷2  そんな感じの、ある夏の昼間でした。
記録をずっとサボっていたら、思い切り記憶が飛んでしまいました。ああ、もったいない。

『丸橋忠弥』
橋之助さん忠弥が登場する前の、お茶屋の亭主と客たちがなんともいい雰囲気だった。後で見たら、そのうちの一人が名題昇進の三津右衛門さんとのこと。体形のためもあるけれど、あったかそうな動きをする方だと思った。

このお芝居に限らず、なのだけれど、舞台が回る時に大道具のウラが見えてしまって興ざめした。幕見から観ているとはいえ・・・。

一場は、なんとなく過ぎてしまった感じで、幕切れの”ごちそう”染五郎さんにも光を感じないまま・・・。そうそう、投げる石が、気付くと足元にごろごろ転がっているのですが、三津五郎さんあれ、よくつまづかれないものだ、と変な感心をしてしまいました。というよりあの石、硬いようだけれどなにでできているのか、気になります。数日前に観た『駕籠屋』では初舞台の小吉さんが犬で可愛らしい声だったのに、こちらは大人の役者さんですから迫力のある声で・・・ちょっとビクッと来ました。


二場では家の中の小道具が細かくて、きょろきょろしていました。まず気付いたのは、お軸が『吉原狐』の時と同じようだったこと(たしか三部の『八犬伝』でも・・・^^;)。そして、扇雀さん女房の着物がかわいらしかったこと。


第三場の立ち回りでは、こっちの目が回りました。え、まだ? え、これでも? え、なにするの? と、???で頭がいっぱいになりました。おまけに橋之助さんにはまだ、”おえん”のイメージが残っていたので、頭がぐちゃぐちゃ。広い舞台いっぱいに、役者さんが動いておられました。

『近江のお兼』
力持ちの娘・・・という時点で覚悟はできていたのですが、想像以上にパワフルな舞台でした。踊りを観ているというのか福助さんのすばらしい身体を見ているというのか。


始めの馬との場面がすべて花道で行われるので、なぁ〜んにも見えませんでした。それでも、前や下の階のお客様が拍手をするのに、「早く本舞台に出てきて欲しい!」と期待は高まります。

とっても可愛らしい娘衣装です。目のお化粧に特徴があるから、可愛らしさと力強さと愛嬌のアンバランスがおもしろい。若衆とのカラミで、ところどころ声を出しておられるのね、そのきっかけのようなものが、とても景気良く思えて気分がよくなりました。


思ったより晒を使った動きが多くて嬉しく思いました。なんだか、バッタバッタと涼しい顔で振っているようにも見え、それでいて身体ぜんたいが休み無く動いているようにも見え。とても、不思議な光景でした。

ああ、やっぱり何も覚えていない・・・。

『たのきゅう』
JR恵比寿の駅でポスターを見て以来、この舞台にはどう心の準備をしたらいいのだろう・・・と思っていました。
なんのことはない。とーっても楽しく、見ごたえも充分なお芝居でした。以下、細かい観察も含めて。

  • お相撲の土俵のような劇中舞台の周りに、すべての場面がミニチュアのように配置されている。ドールハウスとかミニチュア大好きな私は、それだけで嬉しくなってしまう。
  • 舞台前面が”楽屋”、そこから暖簾をくぐって入る舞台の中が、”外”。何度も繰り返して、自分に納得させる。この暖簾をくぐるのは、始めに登場する小吉さん@ぽんきゅう(一寸法師)と、母親病気の知らせに慌てふためく三津五郎さん@たのきゅう。三津五郎さんは頭だけ突っ込むのだけれど、、、たぶん全身は通らないだろうな・・・失礼ながら。
  • 目(耳)を惹くのが、巳之助さん@けんきゅうのドラマー・ボーイ。なんで踊り一座の太鼓(しかも、木の枝で組んであるっぽい)にシンバルが付いているんだ〜! 始めは、目の錯覚かと思ったほどでした。再演したら、彼の他に誰がこの役をできるんだろう、と考えてしまいました。
  • ちょうど舞台の反対側にあたる所には、かわいい民家が。きっとたのきゅうの実家になるのだろうな・・・と見ていました。家の中=劇中舞台側にはお釜や調理道具のようなものも舞台サイズでセットしてあり、とても楽しみ。ところが。。。
  • 扇雀さん@たのきゅうの母が回り舞台に沿ってよろめきながら登場、さっきの民家の後ろに隠れます・・・本当に、隠れちゃった! あの小さな家の後ろに、幕見席からさえ見えないほど完璧に体を隠すなんて。この方のどの演技より、それが一番印象に残りました。
  • 結局、たのきゅう実家の家具たちは、使われることがなかったんですね。


そして、、、

  • 初舞台の小吉さん。『駕籠屋』を観た時にも思いましたが、しっかりした身体をしていますね。これまで子役というと学校に上がるかあがらないかの年齢ばかりを見ていたので、そんな気がしたのでしょうか。でも、そうでなくても、腕とか上半身がとてもきれいに動いたように感じました。踊りのことは全くわかりませんが、きれいでした。足(下半身)は、これからしっかり踏めるようになっていくのでしょうね。第三部の感想でももう少し、付け加えたいと思います。