稚魚の会・歌舞伎会

二日間かけて、両班(りょうはん)の観劇をして参りました。楽しかった〜。けど、ものすごく疲れました^^;。
楽しみ&自分の勉強のつもりで観ていますので、比べるような偉そうなことを書かないように気を付けつつ・・・。見た順で、B班→A班と記録しています。


とは言うものの、普段は目を凝らさないと(モノの例えです)見られないような役者さんを贅沢に目にできるのですから、ついつい人に目がいってしまう。そんな意味で、ヒットはB班でお三輪をされた中村京三郎さんでした。

修善寺物語』

自然の音の描写がとても美しい作品。それに加えて、光の演出も工夫が凝らされていた。特に二場で頼家と桂が登場し月が昇ると同時に、川の流れが月の光で表現されるのがなんとも美しかった。効果といえば一場、烏の声で夜叉王の「もう日も暮れた」が入るのだが、この烏がどうしても赤ん坊の声に聞こえて、少し気味が悪かった。


B班、澤村由蔵さんの姉娘かつらには、自分の力で何としても道を切り開いていく、という人を寄せ付けない強さがあって、最後の死ぬ瞬間までそれが印象に残った。ともすれば頼家よりも強いかも・・・というような。徳松さんは同じ強さでも、あくまで武士の妻として名をあげる、頼家あってこその若狭という部分が強く感じられた。

A班、喜昇さんの妹娘かえでは、ともすれば姉より育ちのいい印象を受けた。頼家と夜叉王のやり取りの間ずっと頭を下げているのだが、その時の腰から頭までのラインが”いい所にご奉公しているベテラン腰元”のようで。それでいて、動きが素早い、を通り越して激しいのが、若さを表していると思った。特に、面を割ろうとする夜叉王を止めるため縁先から部屋へ駆け上がる時、また三場で花道をかけてくる時。全体に存在がとても美しいのだけれど、ともすれば左手が帯のあたりで所在無げになるのが気になった。宙に留まらせないで、帯にあてればまた少し、違うのかも? わかりません。声がとても良くて、一場と三場はかえでの泣きで切れるので、俗っぽく言えば”おいしいな〜”。

夜叉王、修善寺の僧は互いにダブルキャストだったわけだが、B班の時の組み合わせの方が好みだった。何で・・・? A班、坂東悟さんの夜叉王には、もう少し重々しさと訳のわからなさをもとめたくなった。

B班、梅之さんの頼家は、口では厳しい事を言っているけれど夜叉王を職人として認めているような雰囲気が感じられた。A班、蝶之介さんは声が高いので始めはびっくりしたが、不思議と落ち着きがあって気分が良かった。

行親の家来で始めに出てきたセリフのあるお二人は、研修生の方ではなかった。のに、油断していた。。。立ち回りでは五人しかいなかったのが気になっている。

踊り三題

お芝居と違って踊りになると、”得意不得意”が出てくる。役者さんが、ではなく(そんな大それた!)私自身の”好き嫌い”よりもう少し生理的な部分で、動きや形がしっくり来るか、気持ちがいいか、そんな見方をしてしまう。


『廓三番叟』

B班の時は花道外で大変いい席だったのだが、所作舞台が組まれるのに気付いてしまった、と思った。予想通り、本舞台が見えない・・・。ので、特に始めの太夫と振袖新造のやりとりや足の運びがほとんど見られなかったのだった。B班、中村まつ葉さんの新造に初々しい色気があって、見ていて楽しかった。そしてなにより、南天に鈴の鳴り物と扇子を使った最後の太夫の舞が華やかで、迫からの退場も、絵を見ているようだった。


『妹背山女庭訓』
舞踏名は『願絲縁苧環』ですね。

はじめにも書いたとおり、B班、中村京三郎さんのお三輪に釘付けになってしまい他のことはあまり・・・。花道横、しかも七三すぐというとんでもない席から見たせいもあるが、表情が豊かな方だったと思う。登場の時から華やかだな〜と思っていたら、最初の花道での見せ場で容赦なく客席を見据えている(よく知らないけれどあまり客席を見ないようにしますよね・・・福緒さんの橘姫は、焦点を定めないようにしているように見えたくらい)。苧環を咥える場面では唇ではなく歯で噛んでいるのがはっきりとわかり、激しさに圧倒された。三人踊りでも拍子のとり方が私の”得意”にはまったらしく、お三輪が橘姫と求女をリードしているようにさえ感じられた。そして退場の見せ場、花道で糸を手繰りその先が切れていることに気付くと・・・道の先を見つめ、ふっと目を細めたのだ。遠くに見えるはずのない二人の姿を見ようとしているような、そして果てには目から矢を射ているような。。。。汗ひとつかかない美しいお顔に、夜叉のような表情。そんな、近くで見ていて背筋がぞっとするような一瞬でした。これが後に、”嫉妬に狂った自虐の相(だっけ?)の女”になるわけですね。一人っ子で、気が強くて、負けず嫌い、背景をそんな風に想像しました。

ちなみにA班の澤村國久さんはここで、大きく息を吐いておられた。ちょっとだけ、諦めが感じられた。そんなわけないのだけれど。こちらは、大勢の中で育って耳年増な感じの主張が強いお嬢さん。

A班の中村春花さんの求女がなんとも言えず色っぽかった。橘姫の京珠さんと寄り添うとドキドキしてしまうくらいの雰囲気で、これはかわいそうだけれどお三輪、勝ち目はないな、と思ってしまったり。


三社祭

とても楽しくて、男踊りを踊ってみたい、などと思ったほど。


B班では悪玉の市川左字郎さんがとっても楽しそうな表情で踊られていたのが印象に残っている。それに沿うように動きもきびきびしていた。

A班の悪玉、國矢さんはもう、何と言ったら良いのだろう。弾けにはじけ、気持ちの良い踊りだった。善玉の市川段一郎さん、お化粧が左字郎さんにそっくりだったのが笑えたが、、、手足の長さが目に残り、動きが一呼吸遅く見えてしまって残念だった。


この演目ほど役者さんの踊り方の違いが表れてしまうものも・・・。面をつけるとお互いを見ることができなくなるからか、同じ動きをしていても微妙な違いがだんだん大きく感じられてくるのだ。コワイと思った。

『引窓』