吉例顔見世 その4(昼の部・千秋楽)


どうしてももう一度観ておきたくて、昼の部の二幕目のみ幕見。すでに、立ち見でした。


祖父母のような年代の方とお話したりあちこちのブログを読んでいると、「あの時の、あの役者の、あの芝居が良かった。」なんて話を聞かせて(読ませて)いただけて、羨ましくも、その舞台を観たかった・・・と悶えてしまうことが多々あります。そして、いつか私もそんな風に振り返ることのできる舞台に出会いたいな、、、と
その日が、こんなに早く来てしまうとは。
2006年11月 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部
憧れの演目『伽羅先代萩』、初めて舞台で拝見した菊五郎さん、芸達者な子役さんたち、愛嬌と凄みと爽やかさと優しさを同居させた仁左衛門さん、色気をたたえた三津五郎さんと福助さん、この方以外に栄は考えられない*1田之助さん、聳え立つような風格の団十郎さん、小柄ながら上手さを感じさせる秀調さんと段四郎さん。
どれをとっても忘れられない。

  • 英語のイヤホンガイドを借りてみた。日本語のように道具や衣装の説明はなく、流れに関係した台詞を訳していくのが中心。面白いと思ったのが、役者の名前を紹介するのに「Kikugoro, 7th」のように代数を入れていたところ。
  • そういえば、たぶん外国人のお客さんだと思うのだが、「紀伊国屋」だったかな、次々と掛かるのを面白いと思ったのか少し遅れてかけている方があり、なんだかほほえましくも嬉しく感じた。
  • 政岡のクドキでの解説も、興味深い。「(唄の)千松は一年経ったら両親に会えるだろうが、同じ名前の(私の)千松は何年待っても会えない」を、「His parents will be able to see Senmatsu(彼の両親は千松に会えるだろう)」とか「I will never see(私は永遠に会えない)」とか、親の視点で訳している。もしかして、そういう意味なのかしら、ここは。
  • 毒入りのお菓子を食べて箱を蹴飛ばし、智照くん千松はきっぱりと決めてくれた。そういえば先月の丁稚さんの時にも堂々と見得を切ってくれたな。「おいらぁ〜役者になるんだ。」一瞬、その姿が重なって涙が出てきた。ここと、直前の中入りで拍手が起きたのも道理。子役さんには、拍手のタイミングが難しい・・・。
  • 八汐の嬲りが二回ほど多く感じたのは・・・気のせいですね^^;
  • 『床下』弾正の引っ込み。立ち見の手すりに寄りかかって伸び上がるのは私だけではなかったと思う。そして、劇場全体の空気と質量がぐぐぐぅっと団十郎さんの裃のあたりに吸い込まれているように感じた。たぶん、お客さん全員が現実ではない、お芝居の世界に存在していた。

*1:そういえば、以前に早朝歌舞伎で春猿さんがなさっているんですよね。それもまた、不気味でよさそう・・・だけど、想像も付きません。田之助さん、当たりすぎです。