九月秀山祭大歌舞伎 その3(昼の部)
楽しみにしていました〜! どうにか二度目の演目も出てきたので、少し余裕を持って観られるか・・・と思ったのですが、とんでもない。歌舞伎座舞台のパワーに圧倒されました。
今月の筋書、中表紙の松の絵がとても素敵です。
お隣の席に、大向こうのおじいさまが。初めてのことです。特に図っている様子でもないのに、ものすごくいいタイミングで掛けられる。ドキドキして、役者さんよりもその方に拍手をしたくなってしまいました。
大向こうといえば今日はおもしろかったな。『車引』で澤潟屋びいきの方が気前良く掛けていらしたり、上手前方と下手後方の方の声が何度もぴったりと合っていたり。
『車引』
幕開き前にふと、『車引』は両花道なんだろうかと思って覗き込んでみたら、仮花道が出ているような気がしました。よーく考えたら、あの30分だけのために出すはずはありませんね。いつか、両花道で観てみたい。
- 松禄さんの松王、亀治郎さんの桜丸。六月三越のお二人と、体型のバランスが同じなので、私の頭の中にそれが定着してしまいそうです。特に梅王。以前ビデオで拝見した国立劇場(二代目九郎右衛門・・・ごめんなさい、知りません)は松王より梅王の方が背が高く、すらっとしていたのですが。安定感のある梅王、あったかくて好きです*1。
- 桜丸は、柔らかい中にも意志がしっかりしていそうでした*2。
- さすがに歌舞伎座の舞台は大きい! と思いました。梅王と桜丸の会話は、間口に比べてずいぶんと近寄っているように見え、なんだか膝を寄せて内緒話をしているみたいでした。
- 松禄さんのお声が本当によく聞こえて、それも空間に満ちるようで、すごいな〜と思いました。言葉が聞き取りにくかったのが残念でしたが。
- 時平の段四郎さん。三丸の立ち回りの時に、ついつい後見さんに目を遣っていたら、牛車への”入り”が見えてしまいました。見たくなかった・・・な*3。
- 「轢き殺せぇ〜」のあたりが、独特。好きです。
- 亀治郎さんはセリフがきれいでした、、、本当に。淡、々としているのに糸とぴったりはまるのですね。
- ”すくみ”? の型?*4 は、三越の時と違ったようでした。
『引窓』
こんなに良い話だったとは。国立の勉強会でも、古いビデオでも苦手にしていた三つ目の場面、濡髪、お幸、お早のところも集中して観ることができた。
小山観翁さんが解説で「みんな、いい人なんです。悪人が一人も出てこないんです。」と言っていらした。なるほど。
- 吉右衛門さん演じる南与平衛が、本当に”いい人”でした。先日の次郎左衛門といい・・・これが、魅力なのかな。
- 芝雀さんお早のかわいらしいこと。おとなしい、品のいい印象ばかりがあるから、笑いを誘うような演技にも子どものようなかわいらしさが感じられる。それでいて、羽織を着せ掛けるところや長五郎に世話を焼くところは、いかにも女房(長五郎の、ではないけど)役だと思って。
- 後ろを向いて泣いている時、何度か首筋の鬘の下に肌の色が見えていた気がしたのだけれど・・・。背中はかなり塗っていらしたみたいだ*5。
- 囲炉裏、急須、湯のみ、硯箱などなど。実は使わない小道具もあるのだ、と不思議な気がしました。逆に、物語で重要な硯箱、なぜあそこにあったのかな、とも。
『六歌仙容彩』ため息をつくくらい明るくてきれいな舞台だ〜。
- 小野小町は美しくて、しかも才女だったとされるけれど、実はものすごくかわいらしい女性だったのかもしれない。雀右衛門さんが登場されて、そんな風に思いました。雀右衛門さんは、10年以上前にやはり踊りを拝見したことがあったように記憶しています。その時は祖父より年上だなんて想像もつきませんでした。
- 大きな衣装の裳裾を返すのがとても大変そうで、後見さんが必死で直しておられました。本当に平安時代はあんなものを着て宮中で生活していたのだろうか・・・。
- 小町の扇を飾る房を引き合う(梅玉さん業平が引っ張る)場面が、なんとも上品でした。
- 染五郎さんの踊りは先月の玉屋から柔らかいもの続き*6。狩衣を脱いでからが、きびきびとして気持ちのいい動きでした。
『寺子屋』
10月8日追記
とっても観たかったお芝居のひとつ。一つ一つの見せ場や有名なセリフは知っていても、やはり名まで味わいたいもの。
- 幕開き。映像で見たのと全く同じ光景が並んでいて、当たり前だけれどふふっ、と笑う。なんだか、ほっとする。
- 寺子たちが文字をなぞっている中、涎くり与太郎だけが本当に墨を使って書いている・・・違うものを描きたくなったりしないのかしら? 松江さんはハンサムなイメージがあるので涎くりってどうなの? と思っていたのですが、ほんわかしていていい。
- 寺入りの場面はナシだったのですね。
- イヤホンガイド塚田氏の解説に聞き入り、吉右衛門さんの聞き所を逃してしまう・・・。
- 源蔵の吉右衛門さんは、『籠釣瓶』に出てきたと同じ人にはとても見えない。隙がない、と言うのかな。。。
- 小太郎が・・・宗生くんは、あんなに大きなお子さん(年齢が)だったのですね。ついつい、昔の写真のイメージでした。じ〜んとくるなー。考えてみれば、出番はここだけ。もっと見ていたかった。やっぱり、寺入りから・・・。
- 子ども達一人ひとりの顔を検める場面で、それぞれ姿勢や手の形、置き所が違うのが面白いと思い、見ていた。
- 涎くりの後に出てきたのはどの子役さんだったのだろうか・・・? とってもお行儀がよく、型もきれいに見えた。よく歌舞伎の舞台を踏んでいるのかな? だとしたら女の子(見覚えのある名前があったので)?
- 幸四郎さん松王丸と吉右衛門さん源蔵のやり取りは、言葉ではたいして感じなかったが、無言の駆け引きに震え上がる思いだった。
- 午前中に染五郎さんの松王を見ているので、ついつい「ああ、あの松王が年をとるとこうなるのか・・・」と。実際にはほとんど年月経っていないわけですよね。病み振りが本当に衰弱して見えたので、なおさら年をとっている気がした。
- 千代の芝翫さんが本当に品が良くて好きだったのだけれど、源蔵が刀を振り下ろすのに小太郎の文箱で止める時、動きがあまりにおっとりしすぎていてハラハラしてしまった^^; 息が合わなかったのかタイミングが悪かっただけなのか。
- 幸四郎さん松王、福助さん園生の前とも、籠から”降りる”ところがばっちり、しかも園生の前にいたっては黒幕も出なくて、そこが楽しさではあるのだけれど悲しくもあった。いかにも軽そうに運んでいるしね・・・。でも、横から籠の後ろに滑り込んで、くるっと向きを変えて籠から出てきたようにみせる、そういうところが好きです。
やはり、一ヶ月も経つと大した感想ではなくなりますね。思い出し次第、加筆予定。